細菌性食中毒

以前に、ウイルス性食中毒について投稿しましたが、今回は細菌性の食中毒について書きます。
細菌とウイルスの違いはご存知でしょうか?
簡単には、それ単体で増殖できるのが、菌であり、人や動物の生細胞に寄生すること増殖するのが、ウイルスです。
菌といえば抗菌薬で除菌できますが、ウイルスは抗ウイルス薬が必要です。ただ、食中毒で抗菌薬が出ることはあっても、抗ウイルス薬が出ることはほとんどありません。

Check Point!!
・細菌性食中毒には、感染型と毒素型がある
・感染(侵入)型:サルモネラ、腸管病原性大腸菌、赤痢菌、カンピロバクター、腸チフス菌
・感染(毒素)型:腸炎ビブリオ、腸管毒素性大腸菌、ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌、コレラ菌、ナグビブリオ
・毒素型:ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌

感染侵入型(サルモネラ、カンピロバクター)
感染侵入型としては、サルモネラとカンピロバクターがメジャーです。というのも、これらの菌は、鳥や家畜の腸管に存在しています。
つまり、ペットやカラス、野鳥の糞や、牛や豚を捌いた際に包丁で接触することで菌が広がります。
しっかりと加熱すれば予防できます。

サルモネラ
潜伏期間が18-36時間とされています。腹痛、嘔吐、下痢が症状として現れます。

カンピロバクター
潜伏期間が約一週間と名前と同様に長いです。なので原因がわからないことが多々あります。こちらも症状は下痢、発熱、嘔吐などです。

感染毒素型(腸炎ビブリオ菌、ウェルシュ菌)
感染毒素型とは、菌が外界にいるときには、毒素を産生しませんが、人の体内に感染した時に、毒素を作りだす菌です。

腸炎ビブリオ
塩分が好きな好塩菌であり、海に存在しています。海水を飲んだり、魚を洗わずに食べたときに感染します。
水道水などの真水には弱いので、しっかりと洗うことで予防できます。潜伏期間は4-28時間です。

ウェルシュ菌
特徴がある菌であり、偏性嫌気性菌です。酸素があると死んでしまう嫌気性菌です、ちなみに酸素があっても大丈夫な嫌気性菌は通性嫌気性菌といいます。この菌は、動物の消化管(低酸素のため)や土壌に存在しています。食品中に少量混ざってしまうのですが、食事は大抵空気に触れるので、この菌は死んでしまいます。しかし、カレーやシチューの入った鍋の底は低酸素であり、増殖して今います。さらに、芽胞を作るため熱には安定です。長時間放置したカレーを食べるのはやめましょう。潜伏期間は4-24時間です。

毒素型(ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌)
毒素型は、体内に感染していなくても、毒素を作っている菌です。熱で分解できる毒素もあればできないものもあります。なので、毒素の性質と、毒素を作る条件を知っておく必要があります。

ボツリヌス菌
土壌や水中といった、嫌気的な環境に存在している菌です。ちなみに芽胞も持っています。加熱にも強く、嫌気的な条件ではボツリヌストキシンという最強の毒素を産生します。缶詰や真空パックで問題になり、昔からしレンコンで事件が起きました。

黄色ブドウ球菌
人の皮膚のどこにでも存在している菌であり、手の傷とかに大量に存在します。この菌は加熱に安定なエンテロトキシンとい毒素を産生します。予防としては、ケガをした手で料理をしないように注意を。

Science Point!!
・菌自体は、熱変性で除菌できるが、芽胞が問題
・タンパク性毒素がおおいが、熱に安定かつ吸収される
ここで記事を書いていて気付いたのですが、ボツリヌス毒素やエンテロトキシンはタンパク質です。タンパク質といえば、消化管で分解されやす吸収されにくいイメージがあるかと思います。実はたんぱく質にもトランスポーターなどがあり吸収されます。エンテロトキシンは、熱や消化酵素に安定であるため、腸に到達し、毒性を発現します。