「リン酸水素カルシウムをよく新生児に与えるんだけど、ミルクに溶けなくて…」
今回、間接的にこのような質問を受けました!
では、この問題の化学とその対策を考察していきます!!
臨床現場におけるリン酸水素カルシウムとは?
まずは、リン酸水素カルシウムが臨床的にどのようなものかを見ていきましょう!!
臨床上の使用目的
下記代謝性骨疾患におけるカルシウム補給
くる病、骨粗鬆症、骨軟化症
妊娠・授乳時におけるカルシウム補給
リン酸水素カルシウムは、基本的にカルシウムの補給用として利用される製剤です。
今回の質問では、新生児のカルシウム不足に対して用いる時に、ミルクに溶かすことができないということですね!
リン酸塩を用いる利点
とくに早産児などでは、骨のカルシウム量とリンの貯蔵量が低下していることが多く、その補給としてリン酸カルシウムが用いられているようです。
詳細が気になる人は
この文献とか読んでみてください。
リン酸水素カルシウムは、骨の成分そのままであり、これを飲ませることでカルシウムとリン酸の両方を補充するというものですね!
ですが、骨になる成分です、そもそも水に溶けやすいものじゃないですね。
骨が水に溶けやすかったら、みんな骨粗鬆症です。
リン酸とカルシウムを分けて投与して、体内で塩にしてしまうという、補充戦略はNGなんでしょうか??
注射だと血管に塩が析出するからNGですが、内服なら…
※効果を検討している文献が無いか調べて、見つかれば追記します!!
リン酸水素カルシウムの物性
本品は白色の結晶性の粉末で、におい及び味はない。
本品は水、エタノール(95)又はジエチルエーテルにほ
とんど溶けない。
本品は希塩酸又は希硝酸に溶ける。
添付文書にも書かれていますが、水に全然溶けません。
塩の化学がわかっていれば簡単なのですが、塩酸のような酸性の溶液には溶かすことができるんです。
酸に溶けるメカニズム
ここで物性を復習しましょう!
過去記事の「酸性塩・塩基性塩の性質」や「難溶性塩が溶けにくい理由」を参照ください!
リン酸水素カルシウムは、リン酸(中程度の酸)と、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の塩です。つまり、リン酸水素カルシウムが水に溶けた場合、リン酸塩の一部がプロトン(H+)を受け取ることで、水のpHはアルカリに偏ります。つまりリン酸水素カルシウムが水に溶けたとすると、[OH-]が作られ易いのですね!!
実際には、リン酸水素カルシウムほとんど溶けないと言いつつ僅かに溶けてます。
だったら簡単、リン酸水素カルシウムを溶かすことで発生する[OH-]を[H+]で打消してしまえばOKです。平衡が偏り、どんどん溶解がすすみます。
つまり、酸性の溶液にならば、リン酸水素カルシウムは溶けます。
人がリン酸水素カルシウムを飲んだ時には、胃酸で溶けてるんですね。この薬。
(腸で析出しないんでしょうか??)
本題の乳児への投与ですが…、ミルクボトルに詰まるなら…
塩酸に溶かして飲ませればいいんですね!!
いやいやいや…、無理無理。塩酸を飲ませることなんてNGだし、そもそも病院にないわ!
ということになります。このケースの場合は、違うカルシウム剤を用いるのがいいですね!!
では最後に替わりに使えそうな製剤を考えてみます。
リン酸水素カルシウムの替わりに…
リン酸塩が溶けにくいので、
アスパラギン酸カルシウム(アスパラ-CA)
であれば、溶けやすいと思います。
乳酸カルシウム
も行けると思いますが、添付文書には「徐々に溶ける」となっているので、少し溶かす努力が必要そうですね。
これらが替わりの薬として挙がってくるでしょう。
ですが、ミルクはカルシウム含有量が高いと思うので、共通イオン効果で水よりは若干溶けにくいかもしれません。
ただリン酸も別の形で補給する必要があると思います。
追加情報や図が完成したら追記します。
読んでいただきありがとうございました。