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(日本語) 【注射剤の変化】遮光が必要な注射剤一覧 光による分解の機構

Sorry, this entry is only available in Japanese. 注射剤って時々遮光しなければならないものや、あらかじめ遮光バッグに入っているものがあります。 国試でも出題されるので、覚えていたりはするのですが、ただの暗記って面白くありません。 そこで、注射剤の中の分解される成分について知見・考察をまとめてみました。 投与時に遮光が必要な注射剤輸液一覧   ビタミン剤 ビタミン類は光や熱で分解されやすいものが多いので注意が必要です。 ビタミン類の光分解だけで記事が書けそうなので、そのうち書きます。文献だけ羅列しておきます。 ビタミンを含有する製剤には、エルネオパ、オーツカMV、ケイツーN、ビーフリードなどがあります。 お役立ちメモ   【脂溶性】ビタミン E, Kの光分解(A,D?) ビタミンE:トコフェロールの酸化生成物と代謝産物 ビタミンK:安定性実験、ビタミンK1の光分解と安定化(第1報) 【水溶性】ビタミンB2、B6、B12、Cの光分解 ビタミンB2の光分解:Photo, thermal and chemical degradation of riboflavin ビタミンB_6の光および熱反応生成物の解析 ビタミンB12:Photolysis of cyanocobalamin in aqueous solution ビタミンC:L-アスコルビン酸の光分解に関する研究, 分解機構は見つかりませんでした   イリノテカン カンプト点滴静注100mg 文献を調べてみたところイリノテカンの光分解産物が報告されていましたので、分解の機構を考えてみました。あまり自身はありません。ご指摘がありましたら教えていただけると幸いです。「へぇー」ぐらいでご覧ください。 ※機構について確証はございませんので、重要な場で使う場合には自己責任でお願いします。   シスプラチン シスプラチン注 配位子の塩素が水酸基と置換するということです。 Decomposition of cisplatin in aqueous solutions containing chlorides by ultrasonic energy and light この文献に載ってそうですが、私は入手できないので、他の文献を見つけてから書き直します。   ダカルバジン ダカルバジン注用 血管痛を引き起こす代表選手。詳細は過去記事ダカルバジンの光分解機構を参照ください。 Causative agent of vascular pain among photodegradation products of dacarbazine, J Pharm Pharmacol, 2002, 54, 1117-1122. Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索, 臨床薬理, 2001, 32, 15-22.)   ミカファンギン ファンガード点滴用 詳細は過去記事ミカファンギンの光分解機構と分解生成物の考察をご覧ください   ゲムツズマブオゾガマイシン マイロターグ点滴静注用5㎎ IFを読むと「遊離カリケアマイシン誘導体の増加が認められた」という記載があります。 ゲムツズマブオゾガマイシンは、カリケアマイシンとモノクローナル抗体がくっついたものです。リンカー部分には、ヒドラゾンやジスルフィド結合が含まれているので、光によって直接的または、活性酸素を介してこれらが切れた可能性が考えられるかと思います。   タラポルフィンナトリウム 注射用レザフィリン100㎎ ポルフィリンから成る医薬品です。まさに光の影響を受けやすそうですが… 固体では安定だか、水溶液+光条件では24時間で90%以上が分解するようです。 文献に関してはまだ見つけることができてないので、今後情報を追加してきます。     以上、現時点では文献リンクなどの情報だけをまとめさせていただきました。 細かい図などの解説は、今後書いていきたいと思います。  

MEYLON:Why it can not mix with saline?

The reason why the MEYLON con not mix with saline? The permissible sodium period for human is 3~4mEq/kg/Day. A 50㎏ person whose capacity of sodium in a day is 150 mEq/day. Saline has 154mEq/1000ml of sodium. 8.4% of MEYLON (20mL) has 1000mEq/1000ml When a vial of MEYLON (20mL) soluved to saline 250 mL, the total sodium is 20+38.5=58.5 mEq. 58.5 is seems much lower than 150 mEq/day, however, considering the sodium from meals, the value is  corresponds to one serving. メイロン注の使用目的 メイロン注の使用目的は、メニエール症候群のような、内耳系疾患の改善やアシドーシスの是正に使用されます。 メイロン注の成分は炭酸水素ナトリウムであり、配合によっては炭酸ガスが発生したりと、いろいろな不都合が生じてしまう薬剤です。 適応については別記事でそのうち紹介します。   メイロンの使用方法(希釈、投与など) メイロンの適切な希釈溶液 いい文献があったので紹介します。 輸液に炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン®静注)を混合する時の留意点 大塚製薬さんが出している記事です。 その中からデータを引用します。以下のデータは、メイロンと各輸液類を混合した場合の最終pHを示したものです。最終pHが小さいものほど、炭酸が遊離して、体積変化による液面の低下が引き起こされます。 配合変化としては、生食、糖液など大抵のものは大丈夫な様です。 一方、KN3号やフィジオに溶解すると、以下の写真のようになってしまうみたいです。 ガスが発生することで内圧が上がり上の写真のような変化が生じてしまいます。 液面が下がる=ガスが発生しているということです。 輸液に炭酸水素ナトリウム注射液(メイロン®静注)を混合する時の留意点より引用 図3のデータを見てみると、生食とメイロンの混合で、配合変化(ガスの発生)が生じるということはほとんどなさそうです。 メイロン(炭酸水素ナトリウム)は、pH7.5程度までであれば、ほとんどガスは遊離しないようです。 私の仮説は見事に外れてしまいました。生食とメイロンを混ぜても、メイロンがもともと塩基性製剤なので、炭酸水素イオンのpKaを大きく下回るpHに至ることがないためでしょう。 詳しくは、記事の下を読んでください。 生食が好ましくない理由は?? ではなぜ生食はダメなのでしょうか??? いろいろ調べたところ、NaのmEqに注意する必要がありそうです。 Naのmeqを抑えるため? 人に必要な一日のNa量は、3~4mEq/kg/Day程度です。ざっくり50㎏の人で150mEq/dayです。 メイロンは 7%製剤が833mEq/1000ml 8.4%製剤が、1000mEq/1000ml 生食は 154mEq/1000ml 8.4%メイロン 20 mL 1本を生食250 mLに溶かした場合、20+38.5=58.5 mEqとなります。 150までだから大丈夫じゃん!と思うかもしれませんが、食事から摂る分もあります。 なので、HPの観点から、配合変化的には問題ないようですが、ナトリウム量からは推奨されないようですね。   目的によっては希釈をして投与しない方がいいのでは?? という意見もみつかりました。これは、「血液のpH是正のために投与するのに、薄めて(pHを下げて)どうする!」ということです。 その観点から言えば、無駄な希釈は回避すべきだと思いますね。   では、メイロンの配合変化を科学的に分析してみましょう!! Science Point!! pHは7.5までにセーブ 中性の輸液であれば、炭酸ガスの発生は問題なし! 図3のグラフを見ていただくと、pH7.5から炭酸の遊離が始まるようですね。 それもそうです。炭酸(H2CO3)が炭酸イオン(HCO3-)になるpKaは約6.4。 メイロン注のpHが6.4になった時、H2CO3とHCO3-は1:1になります。 H2CO3は、二酸化炭素が水に溶けてできたものです。 CO2は比較的水に溶けやすい気体ですが、ほとんどが水に溶け込まずガスのまま存在しています。 つまり、メイロン注のpHが6.4になった時、約半分のCO2が発生してしまいます。 pHが7.5であれば、H2CO3とHCO3-は1:10程度であるため、CO2の発生量はほとんどないと考えられます。 メイロンを混ぜるときには、相手側のpHをしっかり確認して下さいね。 最後まで読んでいただきありがと

Micafungin(MCFG) photolisys

Sorry, this entry is only available in Japanese. 注射剤の分解の科学として、今回はMCFG:ミカファンギン(ファンガード)の光分解について調査&考察しました。 今回の情報に関して論文があまり見つからなかったので、インタビューフォーム(IF)からの情報と私自身の考察となります。 ファンガードIF Check Point!! ・真菌細胞壁1,3-β-D-glucanの生合成を非競合的に阻害 ・溶解は生食、ブドウ糖液OK! ・1時間以上かけて点滴 ・6時間以上かけるときには遮光を。   ミカファンギン(ファンガード注®)とは? キャンディン系に属する抗真菌薬です。   ミカファンギン(ファンガード注)の光分解について IFの「注射剤の調整法」に、 光により徐々に分解するので直射日光を避けて使用すること。また、調製後、点滴終了までに6時間を超える場合には点滴容器を遮光すること。 [点滴チューブを遮光する必要はない。] と記載されています。添付文書には記載されてなさそうなので注意が必要です。 正直、6時間以上かけて投与するケースがどれだけあるのかわかりませんが…肝障害がある場合でしょうか? その点はわかったら追記します。 さて、ミカファンギンの光分解についてですが、いろいろ調べてみましたが、文献などは見つかりませんでしたが、インタビューフォームにヒントになることが記載されていました。 まずは分解試験の結果を転用します。 ミカファンギンの分解試験(IFより) 下に結果をお示ししますが、熱には安定であり、長時間の光照射により力価の低下が確認できるようです。 40時間という長時間にわたる光照射の結果、規格内ではあるが力価の低下がみられたようです。これがあったために、6時間以上の点滴速度では遮光が必要と決定されたと考えられます。   ミカファンギンの分解物について ファンガード注の製剤中には、分解物が確認されており、分解試験後には増えていたとの記載がありました。 代表的なものとして、3種類の分解物が確認できているようです。 では、この分解を有機化学的に考察してみましょう。   推定されるミカファンギンの光分解機構 ※今回の考察にはエビデンスがなく、あくまでも私自身が考えた、仮定のものです。 Science Point!! ・光に不安定なイソオキサゾール環 ・ヘミアセタールの分解(おそらく光分解ではない) 構造の中で最も、光に不安定で分解されてしまいそうな構造は、イソオキサゾール環のO-N結合です。 この結合が光により均等開裂(ホモリシス)してから、分解物9ができると考えられます。(図の下部を参照) その他の分解物5,6に関しては、光ではなく、夾雑物の影響かと思えますが、ヘミアミナール部位が解列することで生成すると考えられます。(図の中段) 簡単にまとめてみましたが、以上がミカファンギンの分解の機構と考えられます。 この機構を考えると、イソオキサゾール環を有する医薬品は遮光を施す必要がありそうです。

(日本語) 集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)で頻用される注射剤一覧の配合変化早見表

Sorry, this entry is only available in Japanese. 今回は文献の紹介です。ICUでよく利用される注射剤の配合変化早見表を作成した文献を見つけたので紹介します。 特にICUを持つ病院勤務の薬剤師であれば、データとして持っておくべき文献だと思います。 先に配合変化についてまとめている文献をリストします。 集中治療室における注射剤配合変化早見表の作成と有用性の評価 九州大学病院薬剤部 石田 茂ら 医療薬学 2016, 42(4), 286-294. ICUにおける注射剤配合変化早見表の作成とその有用性の検討 北里大学北里研究所病院 阿部 真也ら Jpn. J. Drug Inform. 2012, 14, 75-81. 集中治療部における注射剤配合変化回避に向けた取り組み 島根大学医学部付属病院薬剤部 岡田 晴江ら 医薬ジャーナル 2011, 47, 800-806. (有料) ICUで頻用される注射剤一覧 初めに今回はICUということで、ICUでよく使われている注射剤についてまとめてみたいと思います。 Check Point!! ・気管挿管用 プロポフォール、キシロカイン、ミダゾラム ・鎮痛沈静 デクスメデトミジン、ハロペリドール ・筋弛緩 スキサメトニウム、ベクロニウム、ロクロニウム ・昇圧剤、強心剤 (ノル)アドレナリン、ドブタミン、ドパミン、ニコランジル、ミルリノン ・降圧剤、利尿剤 フロセミド、カルペリチド、ニトログリセリン 参考にした文献 じほう 救急・ICUの業務と薬Q&A   ICU向け注射剤配合変化早見表 文献中で紹介されている、注射剤配合変化早見表の例を以下に示します。 集中治療室における注射剤配合変化早見表の作成と有用性の評価より引用 この表の特徴としては、pHを記載していること、医薬品の縦並びが薬効順であることです。 これにより、表のゾーンを覚えていれば探しやすく、代替薬も検索しやすいのではないのでしょうか?あくまで私の意見ですが…   注射剤配合変化の化学的要因 Science Point!! ・中和反応 ・官能基どうしの反応(アルデヒド+アミン など) ・難溶性の塩の形成 医薬品は本来有機分子であり、脂溶性の化合物ですが、極性官能基(COOH)などを導入し、その塩(COONa)にして、無理やり水溶性を付与しています。これが中和されてしまうと、塩から単なる有機分子に戻り、沈殿したりしてしまいます。配合変化でpHを意識することはとても大切です。強塩基や強酸の製剤はすぐに配合変化を起こしてしまいます。

angiitis from the Photolisys of Dacarbazine

Sorry, this entry is only available in Japanese. 臨床でしばしば問題となる、抗がん剤の静脈内投与による血管炎の発生について科学的に考察してみました。 こういう問題があると何かと理由をつけて考えたくなるのが科学者の性ですね。 今回紹介するのはダカルバジンです。 ダカルバジン(DTIC)とは? 適応症:1. 悪性黒色腫、2. ホジキンリンパ腫、3.褐色細胞腫 用法: 1. 1日100-200㎎を5日連日静脈内投与、4週間休薬 2. ほかの抗悪性腫瘍剤と併用において、1日1回375㎎/m2(体表面積)、13日休薬2回を1コースとする 3. シクロホスファミドとビンクリスチンとの併用において、1日1回600㎎/m2(体表面積)の量で投与 ダカルバシンはアルキル化により腫瘍細胞の増殖を抑制するタイプの抗がん剤です。血管炎が副作用として有名であり、5%以上の頻度で発生しています。この血管炎を防ぐためにも、投与の速度を遅くする必要があります。使用の際に遮光を施すことで、血管炎が抑制されることから、できるだけ光との接触は避けたいところですが、ゆっくりと投与しなければなりません。   ダカルバジンのアルキル化作用機序 ダカルバジンの生体内における活性化機構です。ダカルバジンは肝臓代謝活性化(N-Meの酸化的水酸化)をうけ、腫瘍組織に到達し、DNAの塩基などの求核性のある構造を反応し、メチル基を付加します。 まるでジアゾメタンによるメチル化のような反応機構です。 引用:Synthesis and Molecular-cellular Mechanistic Study of Pyridine Derivative of Dacarbazine T.Li et al.IJPR 2013, 12, 255-265. より   ダカルバジンの光分解と遮光の必要性(光分解でDiazo-ICが生成) 続いて、ダカルバジンか光で分解される機構と遮光の有効性について考察しましょう。 ダカルバジンの光分解生成物(Diazo-IC) ダカルバジンが分解されることで生成する物質は、Diazo-ICとされています。 引用文献は下の二つです: Causative agent of vascular pain among photodegradation products of dacarbazine, J Pharm Pharmacol, 2002, 54, 1117-1122. Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索, 臨床薬理, 2001, 32, 15-22.) 金沢大学 宮本先生グループの研究結果です。 ダカルバジンは200~400 nm(紫外線~青)の光を吸収し、分解します。吸収極大は、230 nmと330 nm付近です。 ダカルバジンが光により活性化(励起)されると、不安定なN-N結合が開裂します。これによりジメチルアミン構造がラジカル開裂を起こし、Diazo-IC (3)が生成します。下記の分解生成物(1-4, 6,7)をマウスに投与する実験より、Diazo-IC (3)が痛覚物質であると同定されました。また、Diazo-IC (3)は、光存在下に脱窒素分解し、(6)へと分解され、未反応の(3)と結合することで赤色生成物を生じます。したがって、着色したダカルバジンは発痛物質Diazo-IC (3)を多く含んでいるか、もはや抗がん活性を失っている可能性が高いと言えます。 (Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索,より引用)   遮光の必要性 では医療現場での実践的な話です。どれほどの遮光が必要で、どこまでの光への接触が許容されるのでしょうか? 先に参考にした文献を紹介します。 ダカルバジンの光分解に対する新規遮光カバーの有用性の検討 森尾 佳代子 先生ら 医療薬学 2013, 39, 381-387. Fig. 1 遮光・測定条件 この文献の実験で使用されているのは下図のような大阪大学病院が作成したカバーです。文献のなかの実験では、これがメーカーから提供されているカバー(おそらく輸液バッグのみの遮光)よりも優位にDiazo-ICの生成を抑制する結果が得られています。 光源:室内光 ①遮光なし ②輸液バッグのみ新規遮光カバーで遮光 ③輸液バッグとルートの両方を新規遮光カバーで遮光 の3 条件で検討 サンプル採取 輸液バッグ内から直接,またルートを通過後に約1 mL 採取   Fig3:ダカルバジンのバッグに遮光をした場合としなかった場合 ダカルバジンの輸液バッグに ①遮光を施さなかった場合 ②遮光を施した場合 の分解生成物(DiazoーIC)の量の違いです。 120分間光にさらすと、輸液バッグ内のDiazo-IC量は、2.4倍の差となります。   Fig4:実際に点滴を流した時のデータ ①遮光なし ②輸液バッグのみを遮光 ➂輸液バッグとルートを遮光 同じく分解生成物(DiazoーIC)の量を測定した結果です。 120分の累積Diazo-ICの量は①②の結果は同じであり、この結果からルートまで完全に遮光をする必要が考えられます。     読んでいただきありがとうございました。