「経口投与できない末期がん患者に対して使える睡眠薬はあるか?」
と相談されたという話を聞いたので、経口投与以外で、不眠をコントロールする方法を調べてみることにしました。
睡眠障害のコントロールは、実は錠剤などの内服薬でも治療が達成されていない症状だと思います。
それにもかかわらず、睡眠薬の経口投与ができない場合、薬剤の選択肢は大きく制限されてしまいます。
睡眠に使用できそうな注射剤としては…
ミタゾラム(短時間)、フルニトラゼパム(中時間)、セコバルビタール、ジアゼパムが沈静系の注射剤として存在しています。
Check Point!!
・睡眠に適応をとっているのは、セコバルビタール注のみ。注射剤の添付文書の効果効能に「不眠症」があるのはこれだけでした。
・フルニトラゼパム注(サイレース、ロヒプノール)、ミタゾラム注(ドルミカム)は麻酔前投与など。
・ジアゼパム注(ホリゾン)は、基本的に痙攣に対して使用
ざっとまとめるとこんな感じです。たったこれだけの様です。(漏れがあったらごめんなさい。)
上に列挙した沈静系の注射剤は、実はほとんどが全身麻酔の導入に使用される薬剤です。
とはいえ、セコバルビタールみたいなバルビツールなど、今時使いたくないものです。
実際には、フルニトラゼパムやミタゾラムといった、ベンゾジアゼピンが使用されることもあるみたいです。文献を引いてみました。
注射剤の使用事例
終末期がん患者の不眠に対するフルニトラゼパム単回皮下投与の有効性について。
一般病棟における終末期がん患者の睡眠障害に対するミダゾラムの使用
という二つの文献が見つかりました。先生方は一度目を通しておくとよいかと思います。
Single-Dose Subcutaneous Benzodiazepines for Insomnia in Patients With Advanced Cancer
英語文献です。
不眠に対するベンゾジアゼピンの皮下注射という記事を、やぎクリニックの矢木先生が書いているので紹介します。
しっかりと引用があるので、こういう記事は大好きです。
作用の選択性的に、
入眠困難型の不眠には短時間型のミダゾラム
中途覚醒、早朝覚醒型には中時間型のフルニトラゼパム
を投与という形での使用となると思います。
Single-Dose Subcutaneous Benzodiazepines for Insomnia in Patients With Advanced Cancer
この文献によると、一日一回ミダゾラム約2㎎とフルニトラゼパム約1㎎で、それぞれ57%(ミダゾラム)と75%(フルニトラゼパム)の患者が6時間以上睡眠をとることができたとの内容です。
どの不眠症のタイプにて投薬したかについては情報が確認できませんでした。睡眠のタイプによらずでの結果であればなかなかなものだと思います。
今回いろいろ文献を読んだ結果、末期がん患者でほとんどの人が不眠と戦うことになっていることがわかりました。
経口投与が可能であればいいのですが、何せ末期がん患者ともなると、普通の投薬ルートが確保できないことはよくあることだと思います。
舌下や点鼻など、様々な剤形が睡眠薬には求められていると感じました。
読んでいただきありがとうございました。