薬剤師国家試験では、エチルシステインとカルボシステインの作用機序が良く出題されます。
カルボシステインは気道粘液中のムコタンパクのジスルフィド結合を開裂させる
この問題文時々見ますよね?正解は✗です。
カルボシステインは、フコースとシアル酸の量を調製します。
この「~システイン」を構造に基づいて解説します。
~システイン系薬剤の構造
[上段]Methyl L‐Cysteine、Ethyl L‐Cysteine、Acetylcysteine
[下段]L-Carbocisteine
化学構造になれている人なら、「ピン!」ときますが、わからない人だっているかと思います。
分子構造上の最大の違いは、SH基です。
これが作用機序の違いになります。
上段の化合物群は、SH基の還元力を基に薬効を示します!
以下に解説行きます!!
先にメジャーなカルボシステインから行きます!
カルボシステインの作用機序
カルボシステインの構造を見ると、SH基がアルキル化されていますね。
SH基を基にした作用機序ではないことが予想されます。
ここで私なりに、作用機序を推測します。
カルボシステインが、タンパクの合成が活発な細胞に取り込まれる。その結果、一般的なアミノ酸であるシステインと置換したタンパクが生成する。
このようなことが作用機序のトリガーだったりしないでしょうかね?
Pubmedで調べてもこれといった情報は見つけられませんでした…涙
(検索力不足です)
そこで頼ったのが、j-stageですね!
ありました!
“たん”をきるアミノ酸誘導体,L-カルボシステイン
谷口 彰良 氏、 杏林製薬 石橋 裕二 博士
2007年の文献なのでちょっと古いのですが、
カルボシステインは、ホスホリパーゼC (PLC) の阻害を介して
シアル酸転移酵素、フコース転移酵素の発現を抑制している可能性が示唆されているようです。
シアル酸とフコースはいずれも、糖化合物です。
炎症が起きている気道細胞では、炎症性サイトカインによりPLCが活性化され、各種の糖転移酵素が誘導されます。
それにより、ゴルジ体における糖鎖付加が亢進して、粘性の高いタンパクが分泌されます。
この粘性の高いタンパクを産生することで”痰”とし、菌や有害物質の排泄を行いやすくしているんでしょうね。
カルボシステインがPLCを阻害する機構の詳細は、2007年の時点では完全に解明されていないようです。
今後、調べて見つかったら追記します!!
いやぁ、予想は見事に外れましたね!(笑)
医薬品は奥が深いです。
フコースとシアル酸に関する文献も見つけたので引用しておきます!
エチルシステイン等の作用機序
この作用機序は実は高校の化学の知識で出てきてます。SH基による酸化還元反応です。
エチルシステインは、自身のSH基を使って、自身がジスルフィド化合物へと酸化されることで、
タンパク質のSーS結合を還元し、タンパク質の粘性を低下させます。