降圧薬の正しい選び方
・ARBの正しい選び方 ←この記事ではこれを解説します
・ACEIの正しい選び方
・CCBの正しい選び方
・β遮断薬の正しい選び方
最近、持参薬鑑別のやり方と代替薬の提案について相談されました。
ARB系の降圧剤は、種類がそれなりにありますが、多く病院がそのすべてを採用しているとは限りません。
「入院が決まった患者の持参ARB系薬剤の代替ARB薬は何を選べばいいの?」という場面に出会った人は、もしかしたら多いのかもしれません。
抗精神薬とかであれば、CP換算表を使用すれば結構やりやすいのですが、血圧についてはなかなか情報がありませんのでこの件について少し調査してみました!
まとめ
・心血管イベント予防
テルミサルタン(ミカルディス) > ロサルタン(ニューロタン)
・心不全
バルサルタン(ディオバン)、カンデサルタン(ブロプレス)、ロサルタン(ニューロタン)
・糖尿病
テルミサルタン、バルサルタン > ロサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン ×オルメサルタン
・メタボリックシンドローム
テルミサルタン > バルサルタン
アンギオテンシンⅡAT1阻害薬(ARB)薬剤同士の力価比較研究
アムロジピンのようなCCBであれば、結構どこでも採用されており、腎負荷などを考慮したりと、代替薬は選びやすいと思います。気になる人は「CCBの正しい選び方」をご一読ください)
今回参考にした文献は以下の2報です。
一つ目の文献はかなりいいので、ぜひ印刷して手元に保持しておくことをお勧めします。
文献1
The Different Therapeutic Choices with ARBs. Which One to Give? When? Why?
Am J Cardiovasc Drugs. 2016; 16: 255–266.
文献2
Antihypertensive activity of angiotensin II AT1 receptor antagonists: a systematic review of studies with 24 h ambulatory blood pressure monitoring
J. Hypertension 2007, 25, 1327-1336.
これらの文献内容を、下にまとめます。
疾患に適したARBの選択方法
上記2つの文献によると、各ARBは単純な降圧作用を得るためには特に大きな差異はなさそうです(記事の後半に記載)。
しかし、合併症に応じて薬剤を適せつに選択する必要がある様です。
Table 2に文献1のサマリーを紹介します。
例えば、心血管イベントの予防(cardiovascular prevent)には、ミカルディスがお勧めされています。糖尿病を有している場合には、テルミサルタンやバルサルタン、糖尿病性ニューロパチーにはロサルタン、イルベサルタンが適しているようですが、糖尿病関連の血圧にはオルメサルタンは回避すべきとされています。
The Different Therapeutic Choices with ARBs. Which One to Give? When? Why?より引用
基礎疾患のない患者の歩行血圧に対するARBの薬効比較
ここからは、合併症は抜きに、単純な降圧効果の比較実験です。Fig. 2,3を見てください。
Fig 2は、平均的な血圧降下の評価で、Fig 3は服用後24時間経過後の降圧効果です。ほとんどのARBが等しいぐらいの活性を示しています。
ちなみに、Systoic BPは、収縮期血圧。Diastoic BPは拡張期血圧です。
Antihypertensive activity of angiotensin II AT1 receptor antagonists: a systematic review of studies with 24 h ambulatory blood pressure monitoringより引用
Antihypertensive activity of angiotensin II AT1 receptor antagonists: a systematic review of studies with 24 h ambulatory blood pressure monitoringより引用
以上のデータを見る感じ、単純な血圧に対する降圧効果に、各ARBs間で大きな差はないようです。
つまり、合併症を抜きにすれば、各ARBの変更はあまり意識する必要はないようですね。
ですが、「ARBを他剤へと変更するときに、投与量はどうすればいいの?」という疑問が残ります。
要するに、「系統の異なる降圧剤の力価は、どれとどれが等しいのか?」ということです。
ARB降圧剤の力価は?同系統代替薬は?
文献1では、Low、High doseにデータを区切って薬剤間の相関をとっています。
各薬剤の力価の相関は、Low群に当てはまるか、Highにあてはまるかで変更すればよいかと思います。
「現在服用中の薬剤がLow群であれば、変更薬剤はLow群の投与量」ということです。
外国のデータなので、投与量は多めです。
薬剤名 Low/High (㎎/day)
ニューロタン 50/100
ディオバン 80/160
イルベタン 150/300
ブロプレス 8/16
ミカルディス 40/80
オルメテック 20/40
ARBを適切に使用するには、基礎疾患を把握して薬剤を選択していく必要がありますね。
しっかりと文献を読めてない可能性があるので、オリジナルの文献を必ず確認してくださいね。
↓オリジナル文献
The Different Therapeutic Choices with ARBs. Which One to Give? When? Why?
Am J Cardiovasc Drugs. 2016; 16: 255–266.
関連文献も紹介しておきます
ARBの有用性について
The Comparative Efficacy and Safety of the Angiotensin Receptor Blockers in the Management of Hypertension and Other Cardiovascular Diseases
Drug Saf. 2015 Jan; 38(1): 33–54.