衛生有機化学という学問を考える

この記事は私の備忘録のようなものです。

薬学の基礎科目といえば、物理、化学、生物ですよね。そしてこれらの基礎科学には当然応用科目がついてきます。例えば、物理といえば、製剤学です。製剤への物理化学などといったテキストもあります。生物といえば、もはやいうまでもなく薬理や病態などいろいろがな学問に必須の基礎科目です。

しかし化学といえばなんでしょう?分子構造として考えると、化学物質を取り扱う薬学の全般に関りがありますが…。私個人が考えるところで、化学とは化学的変化(つまり結合の開裂や形成)を伴う学問です。

薬学部の学問の中で、化学以外に、分子の変形を取り扱う分野が実は一つだけあります。それは……「衛生」です。

化学、有機化学にとって、応用分野となるのは「衛生」なのではないのでしょうか???薬学の中で有機化学の重要性が軽視されている今日、「衛生」とのつながりが重要になってくるものと考えています。

ここでは、衛生と有機化学のつながりを明確化することでどんな利点があり、何を学べるのかを考えてみました。

薬学の基礎科目と応用科目の関係
物理の応用は薬剤、化学の応用は衛生、生物の応用は薬理・薬剤が基本である。詳細には全てが絡み合っているが、基本は上のように分類できる。

衛生有機化学を広める利点

やはり(有機)化学を学ぶ意義を知ることができるためですね。薬学部における有機化学の応用は生物有機化学ぐらいです。基礎学問×基礎学問なので、これでは学習する学生から見ると、実用性がよくわかりません。また、「製薬企業・研究職に行く人しか有機化学が必要ない」というマインドになってしまいます。

そこで、国民の日常に近い「衛生」は重要な分野です。「衛生(有機)化学」を極めれば、身の回りの化学物質を高度に理解することができ、医薬品に限定せず、衣食住にはびこる化学物質を理解し、国民の健康維持に貢献できるはずです。

 

衛生有機化学の細分

では実際に衛生有機化学という学問があったとして、どのようなことが学べるか考えてみましょう。反応や機構をとあり扱えそうな分野には「有機化学」を。有機化学色が薄そうな分野には「化学」を付けます。「このくくりでまとめてテキストにできないかな?」というイメージで細分項目を考えてみます。

代謝有機化学

薬品、添加物のCYP代謝などまさにその通りです。どこの結合が切れやすく、酸化されやすいかなど。

食品有機化学

メイラード反応など考えやすいですね。あとは油脂の自動酸化など。

繊維化学

例えば衣類。衣類の繊維と含まれる漂白剤や柔軟剤などの化学物質も皮膚病に何かしらの影響を及ぼしているはずです。

住居空間化学

ハウスダストや、住宅の塗料化学など、この辺も重要な化学だと思います

 

衛生有機化学は実はすでに存在している

ここまで読んでみて「ん?」と思ったでしょう。

そう、すでに国家試験までに習ったことが多いんですね。実際には「衛生有機化学」と言語化しただけなんですね。こういう言語化が大事だと思います。

だったらすでにやられてるじゃんと思われるかもしれませんが、含有成分の分析方法の有機化学による最適化、構造決定、機構解明など、有機化学が衛生に介入していく領域は沢山あります。

このような学問分野が明確に認識されていくことを願っています。