抗真菌感染症薬ミカファンギン(ファンガード注)の遮光がなぜ必要か?その理由は?光による分解を科学的に考察

注射剤の分解の科学として、今回はMCFG:ミカファンギン(ファンガード)の光分解について調査&考察しました。
今回の情報に関して論文があまり見つからなかったので、インタビューフォーム(IF)からの情報と私自身の考察となります。

ファンガードIF

Check Point!!
・真菌細胞壁1,3-β-D-glucanの生合成を非競合的に阻害
・溶解は生食、ブドウ糖液OK!
・1時間以上かけて点滴
・6時間以上かけるときには遮光を。

 

ミカファンギン(ファンガード注®)とは?

キャンディン系に属する抗真菌薬です。
ミカファンギン

 

ミカファンギン(ファンガード注)の光分解について

IFの「注射剤の調整法」に、
光により徐々に分解するので直射日光を避けて使用すること。また、調製後、点滴終了までに6時間を超える場合には点滴容器を遮光すること。
[点滴チューブを遮光する必要はない。]
と記載されています。添付文書には記載されてなさそうなので注意が必要です。

正直、6時間以上かけて投与するケースがどれだけあるのかわかりませんが…肝障害がある場合でしょうか?

その点はわかったら追記します。
さて、ミカファンギンの光分解についてですが、いろいろ調べてみましたが、文献などは見つかりませんでしたが、インタビューフォームにヒントになることが記載されていました。

まずは分解試験の結果を転用します。

ミカファンギンの分解試験(IFより)

下に結果をお示ししますが、熱には安定であり、長時間の光照射により力価の低下が確認できるようです。
40時間という長時間にわたる光照射の結果、規格内ではあるが力価の低下がみられたようです。これがあったために、6時間以上の点滴速度では遮光が必要と決定されたと考えられます。

ミカファンギン(micafungin)の分解試験

 

ミカファンギンの分解物について

ファンガード注の製剤中には、分解物が確認されており、分解試験後には増えていたとの記載がありました。
代表的なものとして、3種類の分解物が確認できているようです。

では、この分解を有機化学的に考察してみましょう。

 

推定されるミカファンギンの光分解機構

※今回の考察にはエビデンスがなく、あくまでも私自身が考えた、仮定のものです。

Science Point!!
・光に不安定なイソオキサゾール環
・ヘミアセタールの分解(おそらく光分解ではない)

構造の中で最も、光に不安定で分解されてしまいそうな構造は、イソオキサゾール環のO-N結合です。
この結合が光により均等開裂(ホモリシス)してから、分解物9ができると考えられます。(図の下部を参照)

その他の分解物5,6に関しては、光ではなく、夾雑物の影響かと思えますが、ヘミアミナール部位が解列することで生成すると考えられます。(図の中段)

ミカファンギン(micafungin)の分解機構を考察

簡単にまとめてみましたが、以上がミカファンギンの分解の機構と考えられます。

この機構を考えると、イソオキサゾール環を有する医薬品は遮光を施す必要がありそうです。