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ダカルバジンの光分解生成物による血管痛と、遮光の必要性について(分解の科学的考察)

2018年07月21日

臨床でしばしば問題となる、抗がん剤の静脈内投与による血管炎の発生について科学的に考察してみました。
こういう問題があると何かと理由をつけて考えたくなるのが科学者の性ですね。

まず初めに今回紹介するダカルバジンについてです。

ダカルバジン(DTIC)とは?

適応症:1. 悪性黒色腫、2. ホジキンリンパ腫、3.褐色細胞腫
用法:
1. 1日100-200㎎を5日連日静脈内投与、4週間休薬
2. ほかの抗悪性腫瘍剤と併用において、1日1回375㎎/m2(体表面積)、13日休薬2回を1コースとする
3. シクロホスファミドとビンクリスチンとの併用において、1日1回600㎎/m2(体表面積)の量で投与

Check Point!!
・アルキル化剤
・使用上の注意:遮光すること
・血管炎を防ぐため、注射速度をできるだけ遅くする

ダカルバシンはアルキル化により腫瘍細胞の増殖を抑制するタイプの抗がん剤です。血管炎が副作用として有名であり、5%以上の頻度で発生しています。これを防ぐためにも、投与の速度を遅くする必要があります。使用の際に遮光を施すことで、血管炎が抑制されることから、できるだけ光との接触は避けたいところですが、ゆっくりと投与しなければなりません。

使用には遮光が必要(光分解でDiazo-ICが生成)

先に参考にした文献を紹介します。
ダカルバジンの光分解に対する新規遮光カバーの有用性の検討
森尾 佳代子 先生ら 医療薬学 2013, 39, 381-387.

Fig3:ダカルバジンのバッグに遮光をした場合としなかった場合

ダカルバジンの輸液バッグに
①遮光を施さなかった場合
②遮光を施した場合
分解生成物(DiazoーIC)の量の違いです。

120分間光にさらすと、輸液バッグ内のDiazo-IC量は、2.4倍の差となります。

 

Fig4:実際に点滴を流した時のデータ

①遮光なし
②輸液バッグのみを遮光
➂輸液バッグとルートを遮光
同じく分解生成物(DiazoーIC)の量を測定した結果です。

120分の累積Diazo-ICの量は①②の結果は同じであり、この結果からルートまで完全に遮光をする必要が考えられます。

ダカルバジンの光分解による血管炎の発症を科学的に考察

Science Point!!
・原因物質(分解物)は、Diazo-IC!
・体内でジアゾメタンが発生し、DNAをメチル化する

ダカルバジンが分解されることで生成する物質は、Diazo-ICとされています。
引用先は下の二つです:
Causative agent of vascular pain among photodegradation products of dacarbazine, J Pharm Pharmacol, 2002, 54, 1117-1122.
Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索, 臨床薬理, 2001, 32, 15-22.)

その機構と構造はこちらです!

ダカルバジンが光により分解され、血管炎の原因物質であるDiazo-IC(Ⅲ)が生成します。
論文から引用した図なのですが、(Ⅲ)のアジド電価は間違っていますね(笑)そのうちリライトします。

(Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索,より)

ダカルバジンが光により活性化(励起)されると、不安定なN-N結合が開裂します。
これによりジアゾ化合物であるDiazo-ICとジメチルアミンが生成します。

一方、通常のアルキル化作用機序は次のようになってます。

引用
Synthesis and Molecular-cellular Mechanistic Study of Pyridine Derivative of Dacarbazine
T.Li et al.IJPR 2013, 12, 255-265. より

ダカルバジンの生体内における活性化機構です。ダカルバジンは肝臓代謝活性化(N-Meの酸化的水酸化)をうけ、腫瘍組織に到達し、Nu(DNA)をメチル化します。まるでジアゾメタンが反応しているように、メチル化を行います。

読んでいただきありがとうございました。