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(日本語) 授乳婦が飲んでも良いクスリー母乳中に移行しやすい薬剤の科学的性質、子供への影響ー

Sorry, this entry is only available in Japanese.  母乳に移行しやすい薬剤 「授乳中ですけど、この薬飲んで大丈夫ですか?」 薬剤師であれば、必ず遭遇する質問だと思います。 多くの場合答えられません。そして添付文書をみると、 「治療の有益性があると判断される場合にのみ使用」 というありきたりな記載。 私はいつも科学的に判定できないものか?と考えてきました。 答えにたどり着けるかわかりませんが、少しまとめてみます。 Topics & Check Point !! 1. 母乳の性質 2. 母乳に移行しやすい薬剤の科学的性質 3. 必ず注意すべき薬剤 4. 授乳中に頻用される薬剤 5. 最後に(注意事項) 先に参考にした文献を引用しておきます。 知っておくと役に立つ小児科の知識(昭和学士会雑誌, 2013, vol 73, pp301-306) 母乳と薬ハンドブック(大分県「母乳と薬剤」研究会) 母乳および調製粉乳と乳児の脂質栄養  1:母乳の性質 これはこれだけでネタ性があったので、また別件で書いてみます。 ・pH:6.6-7.0 ・15%が脂肪 ・脂肪分は、母体の食事の影響を受ける   2:母乳に移行しやすい薬剤の科学的性質 弱塩基性薬剤>弱酸性薬剤 分子量250~500ダルトン アルブミン結合率の小さな薬剤 母乳中に移行する薬の量は極めて微量で、平均して1%程度。 詳細は、本ページ下部を。   3:必ず注意すべき薬剤 知っておくと役に立つ小児科の知識(昭和学士会雑誌, 2013, vol 73, pp301-306) この文献から引用しました。一度お目通しください。 抗がん剤、放射性製剤、リチウム、シクロスポリン、フェノバルビタール、エトスクシミド   4:授乳中に頻用される薬剤 1:検査の造影剤 授乳婦は、バリウムやMRIガドリニウムが使用されやすい。 バリウムは、ほとんど吸収されないので問題にならない。 ガドリニウムは、母乳に移行しにくく、もし移行したとしても、児にはほとんど影響がない。 2:解熱鎮痛薬 ほとんどの解熱剤は母乳にいこうしにくいが、もし使用する場合は、アセトアミノフェン(カロナール)、イブプロフェン(ブルフェン)にしましょう。 3:抗ヒスタミン薬 眠気を伴うものは回避する(膜透過性が高い) ロラタジン(クラリチン)、セチリジン(ジルテック)、フェキソフェナジン(アレグラ)が望ましい。 クロモグリク酸(インタール)は消化管からほとんど吸収されないので安全に使用できる。 サルブタモール(サルタノール)も通常量で使用できる。 テオフィリン(テオドール)は使えないことはないが、注意が必要である。 4:抗菌薬 ペニシリン、セフェム、マクロライドは1歳未満にも使うことがあるため良い。 テトラサイクリン、クロラムフェニコール、サルファ剤は避ける 5:抗ウイルス薬 アシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)、オセルタミビル(タミフル)は、授乳を介して児が摂取する量は小児用量よりはるかにすくなく、問題になりにくい。 ザナミビル(リレンザ)、ラニナミビル(イナビル)は吸入なので心配いらない。 6:降圧薬 ACEI(レニベース、カプトプリル)は新生児の授乳婦には使用しない方が望ましいとなっているが、母乳中の量はごくわずかである。 ヒドラジン(アプレゾリン)は母乳中濃度は極めて低い ニフェジピン(アダラート)は安全と考えられている。 メチルドパ(アルドメット)も移行性が少ない。 7:ステロイド プレドニゾロン(プレドニン)5mgを飲んだ量の0.14%が母乳中に移行するとされている。 少ない量ではあるが、念のために4時間ずらすことが望ましい。 8:甲状腺薬 レボチロキシンナトリウム(チラージンS)は母乳にあまり移行しない プロピオチオウラシル(プロパジール)は母乳にあまり移行しないため望ましい。 チアマゾール(メルカゾール)もあまり移行しないが児の甲状腺機能をチェックすべき。 9:抗精神薬 基本的に使用すると授乳できなくなる薬剤はないが、児の発達状況をモニタリングする。 以上、知っておくと役に立つ小児科の知識(昭和学士会雑誌, 2013, vol 73, pp301-306)より 5:最後に 今回、授乳中でも使用できうる薬剤を列挙しましたが、必ずしも添付文書上では許可されているわけではありません。 薬剤師さんは、危険性があるものが処方されていた場合、医師に確認はとってください。 母乳と薬ハンドブック(大分県「母乳と薬剤」研究会)   母乳を化学的に分析してみましょう。 Science Point!! S1:弱酸性なので弱塩基性薬剤が移行しやすい S2:強酸薬剤、強塩基薬剤は母乳に移行しにくい S3:弱塩基性薬剤 S1:弱塩基性薬剤が母乳に移行しやすい 生体内のpHは7.4 母乳のpHは6.6-7.0 弱酸性および弱塩基性薬剤は、pKaが比較的7に近く、血漿中で分子型が多少存在してしまいます。これが細胞膜を通過して乳腺に分配してしまいます。 分子型の薬剤は、あくまでも細胞膜を通過するための形態であり、最終的に血漿と母乳どちらに居座るかは、イオン化しやすいかどうかということになります。 なので、「生体内のpHは7.4」「母乳のpHは6.6-7.0」ということから弱塩基性薬剤が母乳に居座りやすくなります。 S2:強酸性薬剤と強塩基性薬剤は膜透過が弱く母乳に到達しにくい 強酸性、強塩基性薬剤は生体内でイオン型割合が非常に多くなるため、細胞膜を通りづらく乳腺細胞にたどりつきにくくなります。 強酸性薬剤が分子型になるにはpH1-2以下の条件が必要です。逆に強塩基性薬剤が分子型になるには、pH13-14の条件が必要です。 S3:弱塩基性薬剤の名前 薬を作るとき、固体であることが製剤化で重要となります。 アミンみたいな含窒素化合物は、塩にするために「HCl:塩化水素」が加えられていることがあります。 つまり、「○○○○塩酸塩」は塩基性薬剤であることが多く注意が必要です。 ちなみに○○○○塩酸塩は塩基性化合物の酸性塩です。 詳細は過去記事:塩基性塩と酸性塩 を  

(日本語) 不眠に使用できる注射剤は?末期がんや経口投与不可患者の睡眠障害(不眠)をコントロール。(ミダゾラム、フルニトラゼパム)

Sorry, this entry is only available in Japanese. 「経口投与できない末期がん患者に対して使える睡眠薬はあるか?」 と相談されたという話を聞いたので、経口投与以外で、不眠をコントロールする方法を調べてみることにしました。 睡眠障害のコントロールは、実は錠剤などの内服薬でも治療が達成されていない症状だと思います。 それにもかかわらず、睡眠薬の経口投与ができない場合、薬剤の選択肢は大きく制限されてしまいます。 睡眠に使用できそうな注射剤としては… ミタゾラム(短時間)、フルニトラゼパム(中時間)、セコバルビタール、ジアゼパムが沈静系の注射剤として存在しています。 Check Point!! ・睡眠に適応をとっているのは、セコバルビタール注のみ。注射剤の添付文書の効果効能に「不眠症」があるのはこれだけでした。 ・フルニトラゼパム注(サイレース、ロヒプノール)、ミタゾラム注(ドルミカム)は麻酔前投与など。 ・ジアゼパム注(ホリゾン)は、基本的に痙攣に対して使用 ざっとまとめるとこんな感じです。たったこれだけの様です。(漏れがあったらごめんなさい。) 上に列挙した沈静系の注射剤は、実はほとんどが全身麻酔の導入に使用される薬剤です。 とはいえ、セコバルビタールみたいなバルビツールなど、今時使いたくないものです。 実際には、フルニトラゼパムやミタゾラムといった、ベンゾジアゼピンが使用されることもあるみたいです。文献を引いてみました。 注射剤の使用事例 終末期がん患者の不眠に対するフルニトラゼパム単回皮下投与の有効性について。 一般病棟における終末期がん患者の睡眠障害に対するミダゾラムの使用 という二つの文献が見つかりました。先生方は一度目を通しておくとよいかと思います。 Single-Dose Subcutaneous Benzodiazepines for Insomnia in Patients With Advanced Cancer 英語文献です。 不眠に対するベンゾジアゼピンの皮下注射という記事を、やぎクリニックの矢木先生が書いているので紹介します。 しっかりと引用があるので、こういう記事は大好きです。 作用の選択性的に、 入眠困難型の不眠には短時間型のミダゾラム 中途覚醒、早朝覚醒型には中時間型のフルニトラゼパム を投与という形での使用となると思います。 Single-Dose Subcutaneous Benzodiazepines for Insomnia in Patients With Advanced Cancer この文献によると、一日一回ミダゾラム約2㎎とフルニトラゼパム約1㎎で、それぞれ57%(ミダゾラム)と75%(フルニトラゼパム)の患者が6時間以上睡眠をとることができたとの内容です。 どの不眠症のタイプにて投薬したかについては情報が確認できませんでした。睡眠のタイプによらずでの結果であればなかなかなものだと思います。 今回いろいろ文献を読んだ結果、末期がん患者でほとんどの人が不眠と戦うことになっていることがわかりました。 経口投与が可能であればいいのですが、何せ末期がん患者ともなると、普通の投薬ルートが確保できないことはよくあることだと思います。 舌下や点鼻など、様々な剤形が睡眠薬には求められていると感じました。 読んでいただきありがとうございました。

Micafungin(MCFG) photolisys

Sorry, this entry is only available in Japanese. 注射剤の分解の科学として、今回はMCFG:ミカファンギン(ファンガード)の光分解について調査&考察しました。 今回の情報に関して論文があまり見つからなかったので、インタビューフォーム(IF)からの情報と私自身の考察となります。 ファンガードIF Check Point!! ・真菌細胞壁1,3-β-D-glucanの生合成を非競合的に阻害 ・溶解は生食、ブドウ糖液OK! ・1時間以上かけて点滴 ・6時間以上かけるときには遮光を。   ミカファンギン(ファンガード注®)とは? キャンディン系に属する抗真菌薬です。   ミカファンギン(ファンガード注)の光分解について IFの「注射剤の調整法」に、 光により徐々に分解するので直射日光を避けて使用すること。また、調製後、点滴終了までに6時間を超える場合には点滴容器を遮光すること。 [点滴チューブを遮光する必要はない。] と記載されています。添付文書には記載されてなさそうなので注意が必要です。 正直、6時間以上かけて投与するケースがどれだけあるのかわかりませんが…肝障害がある場合でしょうか? その点はわかったら追記します。 さて、ミカファンギンの光分解についてですが、いろいろ調べてみましたが、文献などは見つかりませんでしたが、インタビューフォームにヒントになることが記載されていました。 まずは分解試験の結果を転用します。 ミカファンギンの分解試験(IFより) 下に結果をお示ししますが、熱には安定であり、長時間の光照射により力価の低下が確認できるようです。 40時間という長時間にわたる光照射の結果、規格内ではあるが力価の低下がみられたようです。これがあったために、6時間以上の点滴速度では遮光が必要と決定されたと考えられます。   ミカファンギンの分解物について ファンガード注の製剤中には、分解物が確認されており、分解試験後には増えていたとの記載がありました。 代表的なものとして、3種類の分解物が確認できているようです。 では、この分解を有機化学的に考察してみましょう。   推定されるミカファンギンの光分解機構 ※今回の考察にはエビデンスがなく、あくまでも私自身が考えた、仮定のものです。 Science Point!! ・光に不安定なイソオキサゾール環 ・ヘミアセタールの分解(おそらく光分解ではない) 構造の中で最も、光に不安定で分解されてしまいそうな構造は、イソオキサゾール環のO-N結合です。 この結合が光により均等開裂(ホモリシス)してから、分解物9ができると考えられます。(図の下部を参照) その他の分解物5,6に関しては、光ではなく、夾雑物の影響かと思えますが、ヘミアミナール部位が解列することで生成すると考えられます。(図の中段) 簡単にまとめてみましたが、以上がミカファンギンの分解の機構と考えられます。 この機構を考えると、イソオキサゾール環を有する医薬品は遮光を施す必要がありそうです。

(日本語) アンギオテンシンⅡAT1阻害薬(ARB)の力価比較と疾患に適したARB降圧薬の提案

Sorry, this entry is only available in Japanese. 降圧薬の正しい選び方 ・ARBの正しい選び方 ←この記事ではこれを解説します ・ACEIの正しい選び方 ・CCBの正しい選び方 ・β遮断薬の正しい選び方 最近、持参薬鑑別のやり方と代替薬の提案について相談されました。 ARB系の降圧剤は、種類がそれなりにありますが、多く病院がそのすべてを採用しているとは限りません。 「入院が決まった患者の持参ARB系薬剤の代替ARB薬は何を選べばいいの?」という場面に出会った人は、もしかしたら多いのかもしれません。 抗精神薬とかであれば、CP換算表を使用すれば結構やりやすいのですが、血圧についてはなかなか情報がありませんのでこの件について少し調査してみました! まとめ ・心血管イベント予防 テルミサルタン(ミカルディス) > ロサルタン(ニューロタン) ・心不全 バルサルタン(ディオバン)、カンデサルタン(ブロプレス)、ロサルタン(ニューロタン) ・糖尿病 テルミサルタン、バルサルタン > ロサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン   ×オルメサルタン ・メタボリックシンドローム テルミサルタン > バルサルタン   アンギオテンシンⅡAT1阻害薬(ARB)薬剤同士の力価比較研究 アムロジピンのようなCCBであれば、結構どこでも採用されており、腎負荷などを考慮したりと、代替薬は選びやすいと思います。気になる人は「CCBの正しい選び方」をご一読ください)   今回参考にした文献は以下の2報です。 一つ目の文献はかなりいいので、ぜひ印刷して手元に保持しておくことをお勧めします。 文献1 The Different Therapeutic Choices with ARBs. Which One to Give? When? Why? Am J Cardiovasc Drugs. 2016; 16: 255–266. 文献2 Antihypertensive activity of angiotensin II AT1 receptor antagonists: a systematic review of studies with 24 h ambulatory blood pressure monitoring J. Hypertension 2007, 25, 1327-1336. これらの文献内容を、下にまとめます。   疾患に適したARBの選択方法 上記2つの文献によると、各ARBは単純な降圧作用を得るためには特に大きな差異はなさそうです(記事の後半に記載)。 しかし、合併症に応じて薬剤を適せつに選択する必要がある様です。 Table 2に文献1のサマリーを紹介します。 例えば、心血管イベントの予防(cardiovascular prevent)には、ミカルディスがお勧めされています。糖尿病を有している場合には、テルミサルタンやバルサルタン、糖尿病性ニューロパチーにはロサルタン、イルベサルタンが適しているようですが、糖尿病関連の血圧にはオルメサルタンは回避すべきとされています。 The Different Therapeutic Choices with ARBs. Which One to Give? When? Why?より引用   基礎疾患のない患者の歩行血圧に対するARBの薬効比較 ここからは、合併症は抜きに、単純な降圧効果の比較実験です。Fig. 2,3を見てください。 Fig 2は、平均的な血圧降下の評価で、Fig 3は服用後24時間経過後の降圧効果です。ほとんどのARBが等しいぐらいの活性を示しています。 ちなみに、Systoic BPは、収縮期血圧。Diastoic BPは拡張期血圧です。 Antihypertensive activity of angiotensin II AT1 receptor antagonists: a systematic review of studies with 24 h ambulatory blood pressure monitoringより引用   Antihypertensive activity of angiotensin II AT1 receptor antagonists: a systematic review of studies with 24 h ambulatory blood pressure monitoringより引用 以上のデータを見る感じ、単純な血圧に対する降圧効果に、各ARBs間で大きな差はないようです。 つまり、合併症を抜きにすれば、各ARBの変更はあまり意識する必要はないようですね。 ですが、「ARBを他剤へと変更するときに、投与量はどうすればいいの?」という疑問が残ります。 要するに、「系統の異なる降圧剤の力価は、どれとどれが等しいのか?」ということです。   ARB降圧剤の力価は?同系統代替薬は? 文献1では、Low、High doseにデータを区切って薬剤間の相関をとっています。 各薬剤の力価の相関は、Low群に当てはまるか、Highにあてはまるかで変更すればよいかと思います。 「現在服用中の薬剤がLow群であれば、変更薬剤はLow群の投与量」ということです。 外国のデータなので、投与量は多めです。 薬剤名 Low/High (㎎/day) ニューロタン 50/100 ディオバン 80/160 イルベタン 150/300 ブロプレス 8/16 ミカルディス 40/80 オルメテック 20/40 ARBを適切に使用するには、基礎疾患を把握して薬剤を選択していく必要がありますね。 しっかりと文献を読めてない可能性があるので、オリジナルの文献を必ず確認してくださいね。 ↓オリジナル文献 The Different Therapeutic Choices with ARBs. Which One to Give? When? Why? Am J Cardiovasc Drugs. 2016; 16: 255–266.   関連文献も紹介しておきます ARBの有用性について The Comparative Efficacy and Safety of the […]

(日本語) 集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)で頻用される注射剤一覧の配合変化早見表

Sorry, this entry is only available in Japanese. 今回は文献の紹介です。ICUでよく利用される注射剤の配合変化早見表を作成した文献を見つけたので紹介します。 特にICUを持つ病院勤務の薬剤師であれば、データとして持っておくべき文献だと思います。 先に配合変化についてまとめている文献をリストします。 集中治療室における注射剤配合変化早見表の作成と有用性の評価 九州大学病院薬剤部 石田 茂ら 医療薬学 2016, 42(4), 286-294. ICUにおける注射剤配合変化早見表の作成とその有用性の検討 北里大学北里研究所病院 阿部 真也ら Jpn. J. Drug Inform. 2012, 14, 75-81. 集中治療部における注射剤配合変化回避に向けた取り組み 島根大学医学部付属病院薬剤部 岡田 晴江ら 医薬ジャーナル 2011, 47, 800-806. (有料) ICUで頻用される注射剤一覧 初めに今回はICUということで、ICUでよく使われている注射剤についてまとめてみたいと思います。 Check Point!! ・気管挿管用 プロポフォール、キシロカイン、ミダゾラム ・鎮痛沈静 デクスメデトミジン、ハロペリドール ・筋弛緩 スキサメトニウム、ベクロニウム、ロクロニウム ・昇圧剤、強心剤 (ノル)アドレナリン、ドブタミン、ドパミン、ニコランジル、ミルリノン ・降圧剤、利尿剤 フロセミド、カルペリチド、ニトログリセリン 参考にした文献 じほう 救急・ICUの業務と薬Q&A   ICU向け注射剤配合変化早見表 文献中で紹介されている、注射剤配合変化早見表の例を以下に示します。 集中治療室における注射剤配合変化早見表の作成と有用性の評価より引用 この表の特徴としては、pHを記載していること、医薬品の縦並びが薬効順であることです。 これにより、表のゾーンを覚えていれば探しやすく、代替薬も検索しやすいのではないのでしょうか?あくまで私の意見ですが…   注射剤配合変化の化学的要因 Science Point!! ・中和反応 ・官能基どうしの反応(アルデヒド+アミン など) ・難溶性の塩の形成 医薬品は本来有機分子であり、脂溶性の化合物ですが、極性官能基(COOH)などを導入し、その塩(COONa)にして、無理やり水溶性を付与しています。これが中和されてしまうと、塩から単なる有機分子に戻り、沈殿したりしてしまいます。配合変化でpHを意識することはとても大切です。強塩基や強酸の製剤はすぐに配合変化を起こしてしまいます。

angiitis from the Photolisys of Dacarbazine

Sorry, this entry is only available in Japanese. 臨床でしばしば問題となる、抗がん剤の静脈内投与による血管炎の発生について科学的に考察してみました。 こういう問題があると何かと理由をつけて考えたくなるのが科学者の性ですね。 今回紹介するのはダカルバジンです。 ダカルバジン(DTIC)とは? 適応症:1. 悪性黒色腫、2. ホジキンリンパ腫、3.褐色細胞腫 用法: 1. 1日100-200㎎を5日連日静脈内投与、4週間休薬 2. ほかの抗悪性腫瘍剤と併用において、1日1回375㎎/m2(体表面積)、13日休薬2回を1コースとする 3. シクロホスファミドとビンクリスチンとの併用において、1日1回600㎎/m2(体表面積)の量で投与 ダカルバシンはアルキル化により腫瘍細胞の増殖を抑制するタイプの抗がん剤です。血管炎が副作用として有名であり、5%以上の頻度で発生しています。この血管炎を防ぐためにも、投与の速度を遅くする必要があります。使用の際に遮光を施すことで、血管炎が抑制されることから、できるだけ光との接触は避けたいところですが、ゆっくりと投与しなければなりません。   ダカルバジンのアルキル化作用機序 ダカルバジンの生体内における活性化機構です。ダカルバジンは肝臓代謝活性化(N-Meの酸化的水酸化)をうけ、腫瘍組織に到達し、DNAの塩基などの求核性のある構造を反応し、メチル基を付加します。 まるでジアゾメタンによるメチル化のような反応機構です。 引用:Synthesis and Molecular-cellular Mechanistic Study of Pyridine Derivative of Dacarbazine T.Li et al.IJPR 2013, 12, 255-265. より   ダカルバジンの光分解と遮光の必要性(光分解でDiazo-ICが生成) 続いて、ダカルバジンか光で分解される機構と遮光の有効性について考察しましょう。 ダカルバジンの光分解生成物(Diazo-IC) ダカルバジンが分解されることで生成する物質は、Diazo-ICとされています。 引用文献は下の二つです: Causative agent of vascular pain among photodegradation products of dacarbazine, J Pharm Pharmacol, 2002, 54, 1117-1122. Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索, 臨床薬理, 2001, 32, 15-22.) 金沢大学 宮本先生グループの研究結果です。 ダカルバジンは200~400 nm(紫外線~青)の光を吸収し、分解します。吸収極大は、230 nmと330 nm付近です。 ダカルバジンが光により活性化(励起)されると、不安定なN-N結合が開裂します。これによりジメチルアミン構造がラジカル開裂を起こし、Diazo-IC (3)が生成します。下記の分解生成物(1-4, 6,7)をマウスに投与する実験より、Diazo-IC (3)が痛覚物質であると同定されました。また、Diazo-IC (3)は、光存在下に脱窒素分解し、(6)へと分解され、未反応の(3)と結合することで赤色生成物を生じます。したがって、着色したダカルバジンは発痛物質Diazo-IC (3)を多く含んでいるか、もはや抗がん活性を失っている可能性が高いと言えます。 (Dacarbazineの光分解によって生成する発痛物質の探索,より引用)   遮光の必要性 では医療現場での実践的な話です。どれほどの遮光が必要で、どこまでの光への接触が許容されるのでしょうか? 先に参考にした文献を紹介します。 ダカルバジンの光分解に対する新規遮光カバーの有用性の検討 森尾 佳代子 先生ら 医療薬学 2013, 39, 381-387. Fig. 1 遮光・測定条件 この文献の実験で使用されているのは下図のような大阪大学病院が作成したカバーです。文献のなかの実験では、これがメーカーから提供されているカバー(おそらく輸液バッグのみの遮光)よりも優位にDiazo-ICの生成を抑制する結果が得られています。 光源:室内光 ①遮光なし ②輸液バッグのみ新規遮光カバーで遮光 ③輸液バッグとルートの両方を新規遮光カバーで遮光 の3 条件で検討 サンプル採取 輸液バッグ内から直接,またルートを通過後に約1 mL 採取   Fig3:ダカルバジンのバッグに遮光をした場合としなかった場合 ダカルバジンの輸液バッグに ①遮光を施さなかった場合 ②遮光を施した場合 の分解生成物(DiazoーIC)の量の違いです。 120分間光にさらすと、輸液バッグ内のDiazo-IC量は、2.4倍の差となります。   Fig4:実際に点滴を流した時のデータ ①遮光なし ②輸液バッグのみを遮光 ➂輸液バッグとルートを遮光 同じく分解生成物(DiazoーIC)の量を測定した結果です。 120分の累積Diazo-ICの量は①②の結果は同じであり、この結果からルートまで完全に遮光をする必要が考えられます。     読んでいただきありがとうございました。

(日本語) ニキビの治療と科学

Sorry, this entry is only available in Japanese. ニキビは医学的には「尋常性挫創」と言われています。 ニキビの治療方法についてまとめてみることにしました。 殺菌療法 外用の抗菌薬である(クリンダマイシンやナジフロキサシン)が外用薬として外から使われ、内服薬のミノマイシンなどが内側から効かせる薬として使用されます。 ピーリング治療 最近の治療として普及してきている方法です。過酸化ベンゾイル :Benzoyl peroxide(ベピオゲル、デュアック配合ゲル)がよく使用されるようになってきています。これを毎晩風呂上りに塗布することで、ターンオーバーを早め、表皮の雑菌を除去と、肌の生まれ変わりを促します。過酸化ベンゾイル自身には殺菌作用もあるのです。 どんな化合物なのでしょうか?構造はPh(CO)O2です。 なかなか見慣れない、酸素ー酸素結合があります。 複素原子同士の結合は不安定で、熱や光で解列し、ラジカルとなってしまいます。なので冷蔵保存が必要ですよね!ちゃんと患者さんに説明してますか? こんな酸化物を顔に塗るわけです。塗った後の紫外線照射は当然避けるべきですよね。 ミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗菌薬など結構使われていますが、長期使用は耐性菌の出現にも影響してしまいます。なので、過酸化ベンゾイルは積極的に使っていいかと思います。 作用が強そうな薬なので、そんなに使っていいの?と思われるかもしれませんが、長期使用での安全性試験などが行われているみたいです。過酸化ベンゾイルの長期使用結果  

(日本語) 異物の誤飲

Sorry, this entry is only available in Japanese. 「爪楊枝(つまようじ)を呑み込んだんですよ…」(23歳 男性) 研究室の後輩から受けた衝撃の告白…!! 爪楊枝を呑み込む。その大きさからは、なかなか考えることができない誤飲ですよね?? なぜこんなことが起きたのでしょうか?理由を聞いてみると… 「いや、バーベキューをしてたんですよ。その時にスライスされた玉ねぎを、肉に包んで食べてて、野菜にしては固いな…と思ったんです。吐き出したら、爪楊枝が0.8本出てきて。でも実は爪楊枝が2本あったみたいで…」 1.2本の爪楊枝を飲んでしまったようです。 今回は誤飲をした時の対処について 書いてみようかなと思います。 Check Point!! ・意外と誤飲される爪楊枝 ・消化管穿孔、消化管閉塞が生じ、時に外科(開腹)的な除去が必要 ・PTP包装、電池、磁石、タバコ、硬貨、ヘアピン、画鋲が飲まれやすい 症例を調べてみました。以外と爪楊枝の誤飲は多いようです。しかも、その形状から消化管に引っかかりやすく、外科的な処置に発展する例が多いみたいですね。 2006年の報告ですが、爪楊枝を誤飲した症例は23例程あると記載されている文献がありました。(保存的に治療した十二指腸球部に刺入した爪楊枝の一例、爪楊枝誤飲による小腸穿通の1例)(保存的に治療した十二指腸球部に刺入した爪楊枝の一例)より このデータから見るに、爪楊枝は特に胃につまり易いようですね。胃の場合は内視鏡で何とかなる場合もあるみたいですが、外科手術ということも少なくはなさそうです。 穿通(消化管を突き破る)してしまった場合、程度にもよりますが、冷や汗が出るほどの痛みに達する場合があります。悪化すると、腸から腹腔内に腸内容物が漏れ、腹膜炎になったりと危険です。 爪楊枝の誤飲には注意してください。 後輩は、3日たった今、まだ特に症状はありませんが、要注意です。しっかりと爪楊枝がうまくかみくだかれていればいいのですが… 今回は爪楊枝でしたが どんなものが誤飲されやすいのでしょうか? あと、どんな対策が必要なのでしょうか? 誤飲と言えば、「赤ちゃん」ですね。 タバコ、医薬品、電池、錠剤の包装(PTP包装)、コイン、ヘアピンなどがよく誤飲されてしまうようです。 この中で特に気を付けるものは、(含有成分などが)溶けるものや、液体でしょうか。成分が溶出してしまうものは、急いで除去しければ、命にかかわります。 タバコ(ニコチン) 乳児の致死量は、一本。大人でも二本。水や牛乳は効果がなく、のどに指を入れはかせるように努めるとともに、病院への搬送を。灰皿の水を飲んだ場合は一刻を争う対処が必要です。 医薬品 医薬品の種類にもよりますが、精神、循環器系、抗がん剤などは特に要注意。多くの薬が牛乳を飲ませることで、吸収を遅れさせることができます。 電池 数十分で消化管に穴をあけてしまいます。電池が溶け内容物が溶けだすことも十分にあります。 物理的に障害を与えてしまうものも注意が必要です。 溶けるものよりは緊急性は低いですが、消化管にダメージを与えてしまいます。 コイン、ヘアピン、画鋲などが比較的報告されているみたいです。コインは気道を塞いでしまうことがあるので注意しましょう。 口の中にあれば即吐かせる。飲んでしまた場合には、病院へ。 誤飲を科学的に分析してみましょう。 Science Point!! ・爪楊枝は木製なので、セルロース(細胞壁)。消化できません!! ・ただのレントゲンでは発見しにくいので、CTを! ・胃のpHは1~2、腸のpHは9付近 すでにあげましたが、消化管のpHを考え、緊急性を考察しましょう。消化管は、 胃がpH=1~2程。つまり塩酸です。 小腸はpH =9程度です。 胃酸(pH=1~2)で溶けるもの 電池:表面金属の腐食 卵の殻(炭酸カルシウム):塩基性塩なので胃酸で溶けます 魚の骨(リン酸カルシウム):塩基性塩なので胃酸で溶けます。ただ飲んだ骨が大きすぎたり、胃酸が弱いと腸に行くこともあると思われます。 腸(pH=9)で溶けるもの 樹脂:エステル型の樹脂は、加水分解の平衡反応により酸性よりも塩基性条件で分解されやすいです 魚の骨や卵の殻は特に気にする必要はないかと思います。骨がのどに挟まったときは溶けないので、どうしても出てこないときは、病院で取り除いてもらえます。 樹脂関係は、溶けると体に毒なので、早めの胃洗浄などが必要になったりします。 誤飲となると、まずは異物がどこにあるかの判断も重要ですよね。爪楊枝は木製であり単純なレントゲンでは発見しにくいようです。CTだと発見しやすいみたいです。 最後ですが、「誤飲」は飲んだものが食道などの消化管に行くことを言い、「誤嚥」は気管のほうに行くことを示すようです。 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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以前に、ウイルス性食中毒について投稿しましたが、今回は細菌性の食中毒について書きます。 細菌とウイルスの違いはご存知でしょうか? 簡単には、それ単体で増殖できるのが、菌であり、人や動物の生細胞に寄生すること増殖するのが、ウイルスです。 菌といえば抗菌薬で除菌できますが、ウイルスは抗ウイルス薬が必要です。ただ、食中毒で抗菌薬が出ることはあっても、抗ウイルス薬が出ることはほとんどありません。 Check Point!! ・細菌性食中毒には、感染型と毒素型がある ・感染(侵入)型:サルモネラ、腸管病原性大腸菌、赤痢菌、カンピロバクター、腸チフス菌 ・感染(毒素)型:腸炎ビブリオ、腸管毒素性大腸菌、ウェルシュ菌、腸管出血性大腸菌、コレラ菌、ナグビブリオ ・毒素型:ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌 感染侵入型(サルモネラ、カンピロバクター) 感染侵入型としては、サルモネラとカンピロバクターがメジャーです。というのも、これらの菌は、鳥や家畜の腸管に存在しています。 つまり、ペットやカラス、野鳥の糞や、牛や豚を捌いた際に包丁で接触することで菌が広がります。 しっかりと加熱すれば予防できます。 サルモネラ 潜伏期間が18-36時間とされています。腹痛、嘔吐、下痢が症状として現れます。 カンピロバクター 潜伏期間が約一週間と名前と同様に長いです。なので原因がわからないことが多々あります。こちらも症状は下痢、発熱、嘔吐などです。 感染毒素型(腸炎ビブリオ菌、ウェルシュ菌) 感染毒素型とは、菌が外界にいるときには、毒素を産生しませんが、人の体内に感染した時に、毒素を作りだす菌です。 腸炎ビブリオ 塩分が好きな好塩菌であり、海に存在しています。海水を飲んだり、魚を洗わずに食べたときに感染します。 水道水などの真水には弱いので、しっかりと洗うことで予防できます。潜伏期間は4-28時間です。 ウェルシュ菌 特徴がある菌であり、偏性嫌気性菌です。酸素があると死んでしまう嫌気性菌です、ちなみに酸素があっても大丈夫な嫌気性菌は通性嫌気性菌といいます。この菌は、動物の消化管(低酸素のため)や土壌に存在しています。食品中に少量混ざってしまうのですが、食事は大抵空気に触れるので、この菌は死んでしまいます。しかし、カレーやシチューの入った鍋の底は低酸素であり、増殖して今います。さらに、芽胞を作るため熱には安定です。長時間放置したカレーを食べるのはやめましょう。潜伏期間は4-24時間です。 毒素型(ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌) 毒素型は、体内に感染していなくても、毒素を作っている菌です。熱で分解できる毒素もあればできないものもあります。なので、毒素の性質と、毒素を作る条件を知っておく必要があります。 ボツリヌス菌 土壌や水中といった、嫌気的な環境に存在している菌です。ちなみに芽胞も持っています。加熱にも強く、嫌気的な条件ではボツリヌストキシンという最強の毒素を産生します。缶詰や真空パックで問題になり、昔からしレンコンで事件が起きました。 黄色ブドウ球菌 人の皮膚のどこにでも存在している菌であり、手の傷とかに大量に存在します。この菌は加熱に安定なエンテロトキシンとい毒素を産生します。予防としては、ケガをした手で料理をしないように注意を。 Science Point!! ・菌自体は、熱変性で除菌できるが、芽胞が問題 ・タンパク性毒素がおおいが、熱に安定かつ吸収される ここで記事を書いていて気付いたのですが、ボツリヌス毒素やエンテロトキシンはタンパク質です。タンパク質といえば、消化管で分解されやす吸収されにくいイメージがあるかと思います。実はたんぱく質にもトランスポーターなどがあり吸収されます。エンテロトキシンは、熱や消化酵素に安定であるため、腸に到達し、毒性を発現します。