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(日本語) 乳び胸に対してオクトレオチドを処方する理由

Sunday May 3rd, 2020

Sorry, this entry is only available in Japanese.

質問を受けましたので、簡潔にまとめます。

今回の質問は、

「乳び胸の治療でサンドスタチン(一般名:オクトレオチド)を使用するんだけど、理由は?あと副作用で消化器症状が出るのはなぜ?」

というものです。

お恥ずかしながら、「乳び胸」という言葉は初めてでした。ということで、疾患の説明から入っていきます。

 

乳び胸(乳糜胸)とは?

リンパ管の一種である「胸管」からリンパ液が漏出し、胸腔に溜まる症状のことを指すようです。

腹腔に溜まる例もある様ですね(乳び腹水に対してオクトレオチド投与が有効であった子宮頸癌)。

腸管から吸収された脂肪の おおよそ70% は腸間膜リンパ管→乳び槽→胸管へと移行していきます。乳び槽のリンパ液の 50~
90%は小腸及び肝臓由来とされているようです。

 

オクトレオチドの作用機序と方意

作用機序

ヒトの脳下垂体からは、様々なペプチドホルモン(向腺性ホルモン)が分泌されます。
脳下垂体の上部に視床下部がありますが、視床下部はソマトスタチン(SS)を分泌し、脳下垂体からのホルモン分泌を抑制します。
(そのほかに膵臓ランゲルハンス島細胞や消化管からも分泌)

オクトレオチドは、ソマトスタチンの誘導体であり、ソマトスタチン同様に脳下垂体からのホルモン分泌を抑制します。

そのため、脳下垂体から分泌されている成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑制する目的で使用されます。

このオクトレオチドは、ソマトスタチンレセプター(SSTR)に結合して機能を発揮します。SSTRには1~5のサブタイプが存在しており、親和性はSSTR2>SSTR5>SSTR3の順序です。
それぞれの分布は
SSTR2:脳, 腎臓
SSTR5:脳,心臓,副腎,胎盤,下垂体,小腸,骨格筋
SSTR3:脳,膵臓
上記のようになっています。

消化管のSSTRに結合した場合には、ガストリン、セクレチン、コレシストキニンの分泌を抑制し、消化管の運動量を低下させます。

当然消化器に対して副作用も出てしまいます。

 

処方意図

「消化管の機能を抑えるため」
ズバリこれですね。上述した通り、乳び胸はリンパ液の漏出ですので、消化管からのリンパ液量を減少させることで状態を改善させることができます。

消化管の機能が抑制されれば、消化管の血流量も減少するので、リンパ液の両も減少することが期待できるかとおもいます。

 

実際にソマトスタチン系の薬剤は、乳び漏出の抑制に使用されており、1990年の初めの報告以降、種々のケースで使用されています。
Reduction of lymphorrhagia from ruptured thoracic duct by somatostatin
左腎尿管全摘術後に生じた乳糜漏の 1 例
乳び腹水に対してオクトレオチド投与が有効であった子宮頸癌

現時点ではここまでの解説とさせていただきます。

また時間があるときに、より良く書き直していきたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。